てきすとくえすと(Lv.1)

ぶんしょうをかくれんしゅうちゅう。8/8で1歳になりました。

迷い道しるべ

上司(30代男性)とエンドの売場替えをしていた。

 

エンドというのは、お客さんが通るメインの道から見える

面の売場のことだ。

その面を挟むようにして細い通路があり、

その通路の定番棚に通常の商品は収まっている。

 

エンドは通常品とはまた別に、今の時期のおすすめ商品を

お客さんにアピールする場なので、

特に固定で置く商品や決まった形があるわけではなく

(大筋で並べる商品は決まっていたりもするけど)、

担当者のセンスで売場が決まることが多い。

 

 

上司はエンドに積む商品の指示をしながら、

「いいかくえすと、どの商品をどの高さに積むか、

 そのやり方はまた、人によって全然違うんだわ」

と言った。

「俺はこういう商品をこういう高さでこう積んだほうが

 お客さんが取りやすいとか関連商品でまとまってて見やすいとか

 考えてやるけど、他の人は別の売れる商品で積んだりとかもするし、

 俺のやり方が一番ってわけじゃないんだ。まあ、無難だけどな」

 

上司の作る売場は誰が見てもきれいだし、

誰も文句なんか言わない売場だけど、それでも上司は

自分が一番だとは言わない、という事がそのときなんとなく引っかかった。

 

「ただ、いくらきれいな売場作ったって、高すぎる場所に置いたり

 品出ししづらいような売場は作った奴のエゴだから嫌いなんだよな」

 

上司の売場は誰が見てもきれいだし、

きちんと利用する人のことを考えた売場だ。

だから実際に売場を維持する立場の私たちも、文句なんか言わない。

 

 

上司の言葉は続く。

「俺、周りに配慮しない奴が嫌いなんだよな。

 いくらそれぞれの作業をしてればいい仕事ったって、

 他の人と一緒に働いてんだから周りのことを配慮しながら仕事するべきだろ?

 俺そういうことできない自分勝手な奴嫌いだから

 口聞かないんだよね、そういう奴とは」

 

上司は頭も良いし仕事もできる人だけど、

こういう少し、子供っぽいところがある。

 

「いろんな人間と働かなきゃいけないんだから、好き嫌いして口聞かないの

良くないってのはわかってんだけどさ。

直そうとはしてるんだけど、直んないんだよなー。

こういう性格じゃなかったら、きっと今頃俺は店長やってると思うよ」

 

 

大体できたし、あとは頼む、と商品位置などの指示を終えた上司が

事務所に戻っていく姿を目で追いつつ、

ああ、とわたしは思った。

そうか、上司も人間なんだよな…。

 

 

 

”自分が一番じゃない。”

”弱点があって、わかってて、直そうとしている。”

 

わたしには一番に見えて、完璧に見える上司も、

悩みを抱えてて、迷いを持っている。

それでも部下を指導するのだ。

自分の培ってきた知識を伝え、自分が思う正しいことを伝え、

そしてそれが正しいかどうか疑いながら進め、と

部下に道を示すのだ。

 

残った商品を並べつつ、わたしは思った。

やっぱり上司はすごいなあ、と。

 

商品を並べて出たダンボールを片付けながら、わたしは思った。

わたしもそうなりたいなあ、と。

 

 

悩みも迷いも尽きないけど。

それでも突き進んでいたい。

いつか後に来る誰かに、きちんと道を示せるように。

進もうか悩んでる道も迷い道も、

いつか後に来る誰かに、”こういう道もあるんだ”って

きちんと伝えられるように。